【floodgate】KKS_Nbook 名局選② 強豪Titanda_Lに挑む
KKS_Nbookの棋譜を紹介する企画。第二回の今回は強敵を相手にした将棋を取り上げる。
【第二局】強豪Titanda_Lを撃破。「KKS_Nbook3.2_i5_6200U」vs「Titanda_L」
▲7六歩△8四歩▲1六歩△3四歩▲6八飛△8五歩▲4八玉△4二玉▲2二角成△同 銀▲8八銀△1四歩▲3八玉△6二銀▲7七銀△5二金右▲2八玉△6四歩▲8八飛△7四歩
相手のTitanda_Lはその時期の最新ソフトを搭載していることで有名で、常に高いレーティングを維持している強豪である。将棋はKKS_Nbookが先手となり、角交換四間飛車になった。後手Titanda_Lは△8五歩を決める形。15手目の▲7七銀までが定跡手。▲2八玉を見て△6四歩は居飛車の手筋。最終手△7四歩では△6三銀なら普通で、先手からのはやい攻めは無かった。その場合、先手は6九金保留を生かした駒組みを目指す展開になる事が予想される。
▲5五角△3二玉▲6四角△7三銀▲4六角△6三金
▲5五角。22銀・64歩が浮き駒、74歩が突いてあるなど条件が悪いためこの角打ちがあった。▲6四角が飛車に当たるのが大きい。△7三銀では△7三桂もありうる。以下△7三桂▲4六角△6三金▲6六銀△5四歩▲5六歩△5三銀▲3八銀△3三銀▲7五歩△同 歩▲同 銀△7四歩▲6六銀あたりが想定される進行。後手は歩切れで右辺も動きづらく振り飛車ペースだろう。
本譜は△7三銀~△6三金として、角の圧迫をもくろむ形。
▲3八銀△3三銀▲7八金△6四銀▲8六歩△同 歩▲同 銀△7三桂▲7七銀△8四歩
後手の陣形が歪んできたのを見て飛車交換を挑むのが参考になる筋。飛車交換はできない後手はこれを拒否するが、これで8筋を切れたのは大きい。
▲5六歩△4四銀▲5七角△8五歩▲6六銀△4五銀▲7七桂△5六銀▲4六角
相手の二枚銀の圧力をかわすため▲5六歩~▲5七角と引いた手がさっき打ったばかりの△8四歩にあたり、またすぐ△8五歩と伸ばさせることになり振り飛車好調。さらにその歩を目標に桂を活用。▲4六角は▲8五桂△同桂▲6四角△同金▲7三銀のような狙いもある。
△3三角▲8五桂△同 桂▲5七歩△4七銀成▲同 銀△6五歩▲同 銀△5五銀▲同 角△同 角▲6六銀
KKSが上手く手作りをできた場合、その局面を分かりやすく優勢な局面まで持って行くまではこのような捻りあいを制す必要があり、対局者の地力が要求される。
先の図で△6五歩は▲5五銀で空振り。△3三角はそれを防ぎつつ飛車を狙った手。▲5七歩では先述のように▲8五桂△同桂▲6四角△同金▲7三銀もあるが、そこで△8七歩の叩きが好手。以下▲同飛は△6九角▲8八飛△7八角成▲同飛△6七銀成で後手良し。▲8九飛は一度△8三飛▲6四銀成を入れてから△6七銀成▲同金△7八角で後手悪くない。このように7八金型のときは飛車の位置にかかわらず歩の叩きが居飛車の有効手になりやすいため常に注意が必要。
本譜の▲5七歩は、△4五銀などなら先程の変化の時△6七銀成が消えるという意味か。△4七銀成に代えて△6五歩が先だと、▲5六歩△6六歩の取り合いに▲8三歩が絶対手。以下逃げれば▲8五飛、取れば▲7二銀で良し。先程とは異なり、▲8三歩のところで▲6四角の筋は後の△6七歩成が非常に厳しくなるので、飛車のさばきを重視させる必要があるのだ。
そこで本譜は△4七銀成▲同 銀と捨てて形を乱してから△6五歩。対して、先程と同様に▲8三歩もあったが、本譜は▲6五銀とした。
△2二角▲8九飛△8六歩▲3八銀△4六桂▲8六飛△3八桂成▲同 金△4七銀▲同 金△6九角▲5六銀△7八角成
△8六歩は取れば△6九角、放置すれば△8七歩成の狙いで、△4七銀成の捨て駒が生きている。これらの防ぎの▲3八銀に△4六桂と追撃する。さらに銀捨てから金の両取りをかけて図に。ここから飛車をいじめられると面倒だが。
▲8三歩△同 飛▲7二銀△6八馬▲8八飛△7九馬▲4八飛△7三飛▲6三銀不成△同 飛▲5五桂△6一飛▲4五銀
これまでの変化手順で見てきたとおり、やはりこの叩きが急所である。△6八馬以下に対して飛車の取り合いを選ぶのは打った銀が遊ぶ。既に割り打ちは決まっているので飛車は逃がすのが吉。▲4五銀は次の▲4四歩を狙った味の良い活用。
△5四銀▲4四歩△同 角▲同 銀△同 歩▲8三角△7一飛▲6二銀△8二歩▲7一銀不成△8三歩▲4三歩△5二金打
銀を角と交換し、その角で飛車を攻め交換に成功した。後手は持ち駒の金を投入して粘るが。
▲6二銀成△同 金▲4二金△同 金▲同歩成△同 玉▲4三歩△同 銀▲同桂成△同 玉▲4一飛△5二玉▲5一銀
飛車を取るためだけに手放し、働きが弱いように見えた7一銀を成り捨てるのが華麗な寄せ。貴重な一歩を使って▲4三歩と叩くのも絶品。最終手▲5一銀も美しい手で少ない駒で攻めをつなげていく。
△6一金▲4二飛成△6三玉▲6二金△7三玉▲6一金△9四歩▲5三龍△8四玉▲7五金△9五玉▲8三龍△7五歩▲同 銀
これで受け無しとなり、先手が勝利を収めた。格上相手への見事な白星である。
本局は相手の駒組みの隙を突いた角打ちでペースを握り△6三金とさせ、それを攻めの目標とした手作りでそのまま押し切った印象である。今回の▲5五角は後手の形が悪かったため成立したが、ふつう相手にきちんと駒組みされると全く使えない筋ではある。が、覚えておいて損は無いだろう。居飛車の落手を見事にとがめた、KKSの会心譜である。