▲5六歩保留型中飛車vs向かい飛車・相振りメモ
▲6八銀なら左穴熊の含みが消えるため、後手はこれ以上態度を保留することもない。とっとと△2二飛と決める。
端歩の打診は難しいが、先手陣は▲6六角から端を集中砲火する狙いが見えるため受けづらく思う。
▲7七角で、向かい飛車に振り直す見込みが強くなった。それに対応して、△8二銀~△7四歩と早めにしておくのはあった。ただしこれは△7三銀と矢倉にして飛車先を受ける意味では無く、下図のように敢えて飛車先を切らせ、△6三金型に組み手厚く構える方針。
先手は▲6六銀としてくる可能性が高い。そこに厚みで対抗しようということで、上図の△6二金上に▲7五歩なら△6五歩と跳ね返せるのが強み。「歩越し銀には歩で対抗」である。かといって8筋を換えないでいると、△2六歩▲同歩△同飛▲2七歩△2五飛でのちの△8五飛を狙える。
不定形の囲いで6~7筋から攻められる(四手角とか)と弱そうだが、場合によっては他の局面でも使えるか。
本譜は大人しく金無双へ。△4五歩と角交換を挑んでいく手が、4二銀保留型を生かしたもの。角交換後の3三桂にひもが付いており好条件なためだ。もっともこれは先手が穴熊などバランスの悪い陣形に形を決めているときのほうが良さげ。この局面では微妙かもしれない。
進んで上図。先手の6六銀と6八角があまり冴えず、大して後手の角の利きは素通しなので後手指しやすいというのが両対局者の共通見解。先手の囲いは端攻め及び角交換警戒で金無双だが、こうなると△4五歩まで伸びているのが大きく、金無双の急所である4筋攻めができそうなのもかなり心強い。ただし後手もここで指す手が難しい。本譜は△3六歩と歩を換えにいったが、これは後でもできる手なので可能ならば他の手を指しておきたかったがプラスの手が難しい。検討すると△4四角などがあったようだ。飛車や桂の可動域が広がるし、▲5五銀はそこでかわしておいて問題ない。
△3六歩が問題なのは他にも理由がある。本譜は▲同歩△同飛▲3七歩△3四飛と進んだが、▲3七歩では▲3七銀の変化の余地があったためだ。
△4四銀~△3五歩として攻めの目標にできそうなので軽視していたが、そこで▲2六銀とかわす手があったらしい。以下△3六歩▲8四歩△同歩▲2五銀△3五飛▲8四飛が一例でこう進むなら先手持ちな気がする。後手番だが、▲3四飛などの転回があるし、その前に次に▲4一飛とおろす手が▲8二飛成以下の詰めろだ。
もっとも一連の手順は高度で、後手に手段を与えるだけに先手も選びにくかったか。
本譜も△3五銀まで進出してみるが、この瞬間がややばらばらで怖い。実際にここで▲5四歩という手があった。以下△同歩▲4五飛△4四銀▲2五飛は先手優勢。
これではまずいので後手は手抜いて△4六歩と狙われている歩を突き捨てる。以下▲5三歩成△同金(△4七歩成は▲同金直で3五の銀が当たりになる)▲4六歩△33桂(下図左)、または▲4五飛△4七歩成▲同金左△4六歩▲同金△同銀▲同飛△5四飛(同右)が一例だが、いずれも嫌みがついており(5筋のキズ・飛成の狙い等)後手の本意の展開ではない。
本譜は▲9八香と待機されたため△3三桂と跳ねてこれらの狙いを消すことができ、後手満足に。
少し進んで下図。なんとなく銀引きで待機するが優位をフイにするド悪手。代えて△4六歩で断固仕掛けるべきだった。
図では▲8四歩でまずかった。△同歩▲同銀△8三歩でこれ以上無いようだが、盤面を広くみると▲同銀成がある。以下△同銀▲同飛成△同玉▲2三銀で先手優勢。
本譜は銀の前後運動から千日手模様となったが、先手から▲8七飛と打開してきたので、そこで今度こそ△4六歩と金無双の急所を攻めて優勢となった。歩が2枚あるので攻めが切れることはない。ここ代えて△1三角とさらに溜めるのは▲3六歩とここから逆に突き出されて面倒くさい。△同銀は角交換となり、攻めの目標になりそうな角に逃げられてしまう。
ここから先手も暴れるが、下図まで進んで先手玉は必死かつ後手玉は不詰みで勝ちとなった。
※参考著書・「杉本流相振り飛車のセンス」(杉本昌隆七段著・日本将棋連盟)