根岸の部屋

管理人の備忘録がてらに将棋について書き殴ってます。棋力は絶賛伸び悩み中\(^0^)/

【floodgate】KKS_Nbook名局選番外編① WCSC27の前哨戦?

 先の第27回世界コンピュータ将棋選手権で決勝進出を果たした“振り飛車党”HoneyWaffle。決勝リーグのなかの4局が後手番となり、そのうち初手に▲3八銀とされた蒼天幻想ナイツ・オブ・タヌキ戦以外の3局は角交換四間飛車を採用した。うち技巧戦、elmo戦は早々に定跡が切れソフト同士の捻りあいがはやい段階から繰り広げられることになった。

 しかし、残りの1局の大合神クジラちゃん(以下クジラちゃん)戦は違った。後手HoneyWaffleは22手目、クジラちゃんは28手目と比較的長い定跡がヒットした。どうしてこの将棋だけこんなに長く定跡どおりの手が続いたのだろうか。

 

 調べてみると、この将棋にはfloodgate上でKKS_Nbook6.0による前例があった。

「Ukamuse_KabyLake-7700K」vs「KKS_Nbook6.0_i5_6200U」

http:// http://wdoor.c.u-tokyo.ac.jp/shogi/view/2017/04/26/wdoor+floodgate-300-10F+Ukamuse_KabyLake-7700K+KKS_Nbook6.0_i5_6200U+20170426150002.csa

 クジラちゃんはまふ定跡を搭載していたが、これの作者のまふ氏は

(Honeywaffleは・引用者注)角交換四間飛車してくるんじゃないかと予想し、floodgateで角交換四間飛車(=KKS)ばかりやるKKSなんちゃらって名前の棋譜を引っ張ってきて調整しました。 

 (まふ定跡githubから引用)

といっていたことから、この将棋をベースに定跡手の登録をしたのだろう。

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実際、上図の次の23手目、前例局で先手Ukamuse_KabyLake-7700Kは▲4七銀としていたところクジラちゃんの定跡手は▲2六飛という独自の手に「調整」されている。

 ハニワ定跡のほうは、このまふ定跡の改良手を指されたところで定跡が切れた。この棋譜を材料としてこの定跡が加工されたのは間違いないだろう。

 この前例局が指されたのは4月26日で、WCSC27決勝のクジラちゃん対ハニーワッフル戦は5月5日。この期間の間に両者の定跡作成が行われていたことになる。

 

 さて、これらの将棋はいずれも振り飛車側が敗れている。いずれも実力的に厳しいオッズの勝負ではあったが、作戦や局面自体はどうだったのかを調べてみる。

 floodgate上の前例局では以下、23手目から

▲4七銀 △7六角▲7七銀 △3二角 ▲9六歩 △9四歩 ▲2六飛 △5二金左 ▲7九金 △8四歩▲6六銀 △8三銀 ▲6八金寄 △4三金(下図)

と進行する。

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 この図を見て後手を持ちたい人は少ないだろう。歩得こそしているが角が抑え込まれ働きが非常に悪く、金銀が分裂しバランスが良いともいえない。先手陣は隙も少なく、手持ちの角も含め駒の働きが優れ伸び伸びとしている。実際の形勢、または評価値以上に振り飛車勝ちにくいと思う。

 図以下、先手の攻めに後手も反撃するが、大駒の働きの差のせいで攻めに腰が入っておらず、うまく受け止められてそのまま負けている。

 

 一方のクジラちゃん対ハニワ戦。22手目以下、

▲2六飛 △7六角▲7七銀 △3二角 ▲4七銀 △9四歩 ▲9六歩 △6四歩▲8八玉 △5二金左 ▲7九金 △7四歩 ▲5六銀 △6三金▲4五歩(下図)

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 居飛車に気分よく先攻される展開である。つくづく後手は筋違い角が働かない。また、得した歩の用途もあまりない。

以下、△5四角 ▲4四歩 △7三桂 ▲6八金寄 △4四飛▲4五歩 △4一飛 ▲3五歩 △同 歩 ▲5五銀(下図)

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 後手は△5四角と出て対抗するが、銀と角の対抗では頭の丸いほうの分が悪い。7六歩の屋根がないため角の利きが8七に直射しているのが生きる展開にしたいが、その目途はとても立ちそうもない。その実現のためにはなにか駒を交換しなければならないし、そもそも87は▲7八金寄などで一手で補強できる。何をどうやっても角が負担だ。実戦もそのまま居飛車勝ち。

 

 実のところ、前例局でKKS_Nbookが指した△5四角は定跡手ではなく、ソフトが自力で思考した末に選択した手なのである。浮かむ瀬系は時折、特に浅い読みだとこのような角を推奨しやすい気がするが、そこから手を進めてみると上二局のように指しにくい局面になりがちで、浮かむ瀬自身も反省して評価値をさげていく。elmoなどの新しい評価関数だとこの癖は直っている感じだ。

 

 結論。このような筋違い角を放っても打った角の働きが弱いので有力になりにくい。すでに飛車が向かい飛車に振りなおされていて直ちに4三角~3五歩~2四歩のような反撃を狙える場合、またはいつぞの藤井ー羽生の王位戦王座戦だったか?忘れた)のように、6七(4三)と両取りになるように角を打ち3六(7四)のほうの歩を払い、2筋(8筋)方面を角の利きを絡めてちょっかいをかけていく展開でもない限りは有効手になる可能性は低そうだ。

 

※7/22追記

HoneyWaffleさんにTwitterにてこの記事について言及していただきました。この件に関する真相がわかりました。ありがとうございます。